光の影/松本 涼
 
おそらくそれは夢だったのだ

夕やけを膝に乗せて僕はおもう


引き潮の静けさがこの身体を隅々まで覆っても

どこかでまだ焦げた匂いがするのだけれど


膝を転げ落ちた夕やけは世界を少しずつ

現像しながら夜の雫を集め始める



転がりながら小さく歌って

途絶えそうに空を見上げて


おそらく僕はその時 夢を生きていたのだ


寝転がった君の背中を見つめては

まるでひとりではないみたいに



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