ゆびさきに/竹節一二三
ないないないない
さがしているものはいつもみつからない
ゆびさきにふれる未来のようなものはいつも
すぐにすり抜けてゆく
ないないどこにもみつからない
発作を起こしながら部屋中を駆け回るけれども
さがしものはなんなのか忘れてしまった今
どこにも なにもない
呼吸をするように
ものをさがしている
だれかをさがしている
すがるように ゆびさきは震える
ないないそれでもみつからない
暗闇をかきわけてあさひがのぼるまで
あしを棒にしても
ゆびさきが凍っても
ひざが笑っても
こめかみが疼いても
さがしものはみつからない
誰かのうたが耳のおくで聞こえる
さがしものはなんですか
みつけにくいものですか
そうとも見つけにくいものだとも
探しているものは思い出せない
そのうちに眠気が脳天をつきさして
わたしはストーブをつけたまま眠る
ゆびさきはまだなにかをさがしている
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