ジジ星/蒸発王
でも
ジジ星だけは
欠かさずに作った
そんなプラネタリウムの一つを
今年
祖父の遺品の中に見つけた
ワガママを言って
式場の照明を落とし
プラネタリウムを映してもらった
次々と進行する葬儀
回るプラネタリウムの星々
僕は涙を流さないように
ずっと
壁に映ったジジ星を見つめていた
宴会が終わって
帰路についた時には
もう真夜中だった
見上げれば
町の火が消え
空にはいつもより沢山の星が
煌いていて
僕は
そう
僕は
その中で
確かに
本当に
確かに
瞬く
ジジ星を見つけた
見間違いではなく
微かではあるが
まぎれもなく
ジジ星の
祖父の
光だった
こらえきれない涙が
胸に抱えたプラネタリウムに落ちて
ぽん と薄い音を起てる
滲む光を離さないように
祖父の星を見つめ
立ちすくんだ
『ジジ星』
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