終着駅から始まる眠り/千月 話子
 
車よ
その叫びを子守唄に替えて
眠れない私の頭上から
緩やかにやって来て
通り過ぎるなり
深く足首に絡み付き
コトコトと
思い出の場所へ運んでおくれよ


私達の夜は そうして
互いを慰めながら
平和へと変わって行くのだから


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何も無い駅は夜の夢
線路を眺める木目のベンチで
亡霊でもない
美しい姿をした女が
足を揃えて座っておりました
うつら うつらと
歌っておりました


この終着駅に 進む線路は無く
この終着駅で 夢へと切り替わる
それは 上昇するでもなく
    下降するでもなく

宙ぶらりん と

靄の彼方へと
続いておりました

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