東京/落合朱美
つしか私の知らない街になった
六本木という洒落たシティに
ヒルズ族とかいう若者が
大きな野望を抱いて集う
そんなことはテレビで知った
彼らの野望は巨大なバルーン
都会の雑踏の中で
空へ昇って
やがて 破裂
彼らの野望と私たちの「もしも」
大きくてもささやかでも
はじけたあとは夢の亡骸
どんな違いがあるというのだろう
きっとおんなじ虚ろな目をして
東京の空を漂っている
東京は黙ってそれらを飲み込んで
膨れ上がった胃袋をさすりながら
ほんとうは優しい瞳をそっと閉じて
たぬき寝入りを決めこんでいる
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