Wednesday Night/吉岡孝次
 
川のおもてを流れる風が霧を吹き払う
何か古いアメリカ映画を視ているようだが
ここは日本だ
橋を
青く塗る国

     *

歩く
ただ歩く
たえず距離を念頭に置いて
台地を踏破する
日曜ごとに繰り返してきたアウトドア・ライフだ
空は澄み
風もうまいが
きみが来るわけもない
それでも僕は歩く
方位を正しく測り
荷を軽くして
きみと同じ世界を味わう
願いが二人を繋ぐことはない
だからこうしてしばらく
南中に影を消しながら行く

     *

空が高い

     *

車中で少女を見かけた
朝七時たまに同じ車両に乗り合わせる少女だ

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