読んだ人が題名を付ける詩/海月
 
行き交う人々を横目で見て
何時も通りの家路を辿る

煙草の煙が妙な存在感を示す
それはその人よりも強く
自己を主張
気づいたらもう消えていた

塗り潰したキャンバス
それはこの場所を描いているのだろうか
到底理解できない
気づいたらもう白はなかった

朝と違う人々を横目で見て
何時も通りの本屋による

室内に流れるこの曲へ
今は流れるべきじゃない
なんて思っても口にしない
何かとつけて平和主義

陳列と羅列の棚に手を伸ばす
一冊の知らぬ作者は
それは芥川賞と書かれた帯をしている
その帯の価値は
よく分からずじまいに買ってみる
陳列と羅列に乱れが走った

朝と同じ家に着き隣人を気にして
何時も通り部屋に入る

テーブルに無造作に在る
昨日の直木賞の本
床に投げ捨てられた
一昨日のノーベル文学賞の本
今日の本は何処へ

そして
今日という日は何処へ

夜と同じように隣人を気にして
何時も通りの仕事へ出かける
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