クシャ/松本 涼
 
無数の魚のウロコのカタチに
河の水面が風にざわめいている

そのすぐ脇では同じタイプの高層マンションを
数棟建設する工事の音が続いている

ここにはもうしばらくすると
4000人余りの人が越してくるらしい


私は通りすがりの人として
その風景をその風景として眺めていた


立ち止まった足元には一昨日の雪が
まだ少し残って固まっている

クシャ
っと踏んで私は歩き出す


無表情な言葉だけを
そこに残して



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