姉月/とうどうせいら
 
んな所へ来てないよ



生意気な私
近頃は歯向かってばかり



血色悪く
日毎に痩せている体
絡まっていく人の群れ
みんなが幸福を望んでいる
そのパワーが気温を密やかに上げ
ルールが見えないなら一度死んでみるといいと
スクランブル交差点の向こう側で
群集がわっと
一斉に
笑う



それでも生理がやってくる
少し狂いがちな月時計で
それでも必ずやってくる
私があなたを忘れても 体はきっと覚えている


薄っぺらな体にも
ちゃんと赤い血は流れてる


唇が
キスの味を忘れても
耳が
あの人の声を留めなくても
乳房が
誰に求められなくても
声が
誰を悦ばせなくても


私は私
私は女
私はいつかの どこかの母



清潔なナプキンをあてがうと
今晩は
微かにいびつな
まあるい月で


私のことを屋根瓦の上から見下ろし
お姉さんのように優しく


淡く
霞んだ









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