セックスボランティア(R18)/宮前のん
のあのトイレでの出来事、あれはまさにそれだったのだと。
私はたぶん、知ろうとしていなかったのだと思う。本来、健全な人間にあって当たり前の性への要求が、身体障害者の人にもあるとは考えたくなかったのだ。なぜなら、それは極めて難しい問題だからだ。
問題というのは、それに解決する見込みがある場合にのみ、人は拾い上げることが出来るのだと思う。なぜなら、解決する見込みがないのに拾い上げてしまうと、抱えたまま途方に暮れることになるからだ。だから見ぬふりをしていた。見たくなかった。ずっと記憶の奥底に閉じ込めたまま、そんなもの無いふりをしていたのだ。
私があの当時、彼の性の問題に対峙していたとしても
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