潜夜一夜物語/蒸発王
 



ふふ

月見草の黄色が浮ついたかと思うと
それは額縁の外へと逃げ出し


目の前に
黄色のドレスを着た淑女が立っていた



私は畏まって
黄色の淑女に手を差し出す
淑女は私の手をとり

どちらともなく
闇の擦れ合う音に乗せて
ワルツを踊り始めた


彼女の細い腰を引き寄せながら
口笛のような風が
耳元を掠める


月見草の匂いを
捕えながら




夜が更けゆく



世が更けゆく








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