つがる/仲本いすら
 


街は未だにざわめきが残るけれど
フェイクファーを首に巻いたアノ人は もう、いないみたい

賑やかな場所が ほんと、ほんと大好きで
夏祭りにも来ていたし、収穫祭にも来ていたのに
アノ人のにおいは すこしずつ薄れている


りんご、


そうだ、たしかアノ人はりんごが好きだった
夏祭りではりんご飴、収穫祭ではアップルパイ
たくさん買い込んで ほんと、ほんとおいしそうに食べていたっけ


りんごがあれば 今年も来てくれるだろか


賑やかなのが好きだったのかな
りんごが好きだったのかな

この街が、好きだったのかな

それとも、


彼の好きだったりんごを ほおばるたびに

彼の甘い味(キス)を思い出して、

     を思い出して、



また今年も、アップルパイを焼こう。


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