がんばっちゃうもんね/炭本 樹宏
 
 感覚の麻痺が進行している
 ときめきという言葉を街のなかで
 落としてしまった

 かすかに残る感情は
 明日も神経をすり減らす
 人との交じり合いで
 かすんでゆく

 がんばっても
 がんばっても

 絶望はぼくのあとについてくる

 でも
 僕は信じてる
 明るい光りに照らされて
 いままでの苦痛がいやされることを
 多くは望まない
 一日に一度でも
 生きてる喜びを感じられれば

 絶対 絶対
 あきらめない

 人には痛々しくみえるのかもしれない
 
 この季節
 願い事は叶わないことを
 悟った

 歯車の狂った生活の中
 壁の一点をみつめたまま
 紫の煙をはきながら
 過去の風景を
 戻らない光景を
 フラッシュバックのように
 瞼の裏に映しだし
 いたたまれない悪夢のように
 僕の心が崩壊していく様を
 まるで実験のように
 僕は赤いダイヤリーに
 刻み込む

 今年は辛かった
 来年が安らかで
 平凡に過ごせることを
 願う

 

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