世界の別名/岡部淳太郎
ただひとりで立ちつくしている
いっぽうのおまえは日常のまどろみ
新たにやってくる古い朝のために
疲れた肉体を微笑みながら 枕の下に埋める
これがおまえの世界である限り
世界は決して暮れることはない
秋の枯葉が落ちる時
世界も同時に落ちるだろうか
いや そんなことはあるまい
世界はきっとおまえの中で
ここにいるひとりの 別の土地にいるひとりの
それぞれのひとりの中で
変らずに 大きな根を生やしたままだろう
ある者にとって世界はガ行の濁音で発音され
別のある者にとってはラ行の清音で発音され
そのようにして世界は無数の別名を持っている
これがおまえ
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