オムレツは知らない/ブルース瀬戸内
レツは実際はその命運を
ケチャップに委ねている。
世界は常に何かの過渡期である。
オムレツは完成されている。
オムレツは完成されていた。
後にも先にも
もうひけないのだ。
オムレツはケチャップを食べる。
自らを委ねていたものを
オムレツは食べる。
しみこんでいるだけかもしれないが
ケチャップはもうパスタの方を向けない。
意味ありげなふくらみは
虚勢なのかもしれないが。
そのドーム状の中に潜む
すべての謎と一緒に
私はオムレツをすべて食べる。
皿にはケチャップの、未練が残っている。
そのことを
オムレツは、もう知らない。
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