環/アンテ
 
かった
ただ涙がとまらなかった

ナイフを取り出して
鳥の両目をくり抜く
麻袋に入れて口を縛る
振り返ると
ぼくが歩いてきた軌跡を描くように
点々と鳥の死体が転がっている
麻袋はずっしりと重い
目なんかがなければ
鳥に気づくこともないのに
死体を踏みつけてしまった時だけ
ぐにゃり
イヤな思いをするけれど
また一羽 鳥が落ちてきて
土に叩き付けられる
ぼくは死体に向かって歩きだす

たった一度だけ諦めた時のこと
煙は真っ直ぐにたち上っていた
彼女は燃えて
乾いた骨だけになった
二十歳で死ななければならなかった彼女の
身体の内側を蝕んだもの
命を食らっ
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