*寿ぐ*/かおる
色とりどりの三角の旗が
風を孕んで遊ぶ
73歳でガス管を含み自殺した文壇の重鎮の
瀟洒なアパルトマンは33年後の今も色褪せる事なく
すくすくと育ったヤシの並木に木枯らしが哭く
日常やしがらみ、本音にツノまで隠し
ほころび、ヒビも取り繕い
クリスマスケーキの縛りを
軽やかに飛び越え
二足以上の草鞋を嬉々と
履き替える道を選んだふたりの
晴れの場に
全国津々浦々を網羅するかのように
散らばったゆかりの人々が集まってくる
和やかに華やかに粛々と式が進み
久しぶりに見た夕焼けは
10年越しの情熱をまね
いつまでも燻る種火のように紅に燃え
遠く江ノ島の向こうに浮かぶ
おやまをかくしてしまった雲を溶かしていくようで
振り返ると向こう側が透けて見える涙型のお月様
とっぷりと
つるべ落としで迫ってくる夜に
燦然と輝き出しました
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