ホームライナーの吟遊詩人/うめバア
 
馬喰町も錦糸町もすっとばし
あたしは早く帰りたい
帰って、スっと
力を抜きたい
どこへ?
あの日へ?
いいえ、
CDコンポのある、あたしの部屋

そこで何をする?
夢を見る?
いいえ、詩を書くの
それがあたしの、夢
小さい頃からずっと
吟遊詩人になりたかった
正確に言うと
ぎんゆうしじん、という言葉に憧れていた

ふらり、ふらりと生きていき
酒の宴を抜け出して
夜の砂漠でちりぢりと
星になる
できればそんな
吟遊詩人に
なりたかったっての

荒川の鉄橋を渡ると見えてくる、立ち並ぶ家々の灯
黄色い電車とすれ違い
素知らぬ顔をして、市川を通り過ぎ
携帯片手にパチパチカチカチ
ごついハゲおやじは
津田沼で降りた
後に残るのは何?
イライラの後の疲労感
いいえ、
一陣の風のような寂しさ

終点の先は、それぞれに分かれ

海岸へ行く者
砂浜へ行く者

森へ迷う者
空を駈ける者

吟遊詩人
今夜はどの星へ行こうか

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