仕組みを、知ってゆく/A道化
石段と
石段と
腰掛けた石段と、石段の
夥しい無骨な角から
無言で下垂する影を利用し
日没が冷たく
成立してゆく
「もしも
ここだろう、と探り当て
わたしの影に触れてくるような物質があれば
わたしは泣く」
と思う
影を利用するだけ利用して、夜は
きちんと棄ててあげることをしないから
朝にはきっとまた
あの影は夜を待ちながら
無言で下垂することになる
わたしはそこを、ここでしょう、と探り当て
触れる、そして
わたしが泣く、と知ってゆく
もしもわたしが触れても泣かない影があるなら
ただざらつくばかりで泣いてくれない影があるなら
わたしのほうが泣くのだ、と知ってゆく
ほら、知ってゆく
2005.11.6.
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