薄暗い(檻)の中で/岡部淳太郎
 

死は すでに済んだことにして
毒虫のように
あるいは人のように
この(檻)の中で慣れてゆく
閉め切った窓の中
同じ空気だけを呼吸して
天井からぼろぼろと
接着力を失った子音が崩れ落ちてくる

あきらめて使徒となり
あきらめて人となり
この(檻)の中に埋もれてゆく
唇の上に流れる古い音符を飲みこんで
織りこまれた毛のものにむせる
  沈み
ながら 下りてゆく
この(檻)の中心から穴を穿って
この身の人となりを確かめる
ひとりきりで笑え
外では風が
折れ曲がりながら吹いている



(二〇〇五年十月)
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