亜熱帯チャイナタウンにて/MOJO
 
「頼みます。こういう金はぱっと散財しないと」
 私もうっかり私の帰属する民族の慣用句で応えてしまった。
「陳さん、おかげで今回のお客は今のところ上機嫌さ」
「それは良かったです。茂如さん、次も私を使ってくれるよね」
「ああ、おれたちは名コンビと言っていいかもしれないね」
 私は泥のような苦いコーヒーを啜りながら、決められた行程の合間を縫って、彼等をいかにバックマージンの高いみやげ物やに連れて行くかを思案していた。
 チャーターバスがホテルに横付けされるまでにはまだいくらか間がある。私は土産もの業者の名刺をトランプをくるように弄んでいた。  


                          <了>

戻る   Point(1)