『9月11日の線香花火』/川村 透
 
の奥の双頭の蛇硬く、しだいに硬く育つ気配とともに少女の
もう片方の手にはいつしか灯火を移された線香花火が微笑み始めていた。
火花をもみしだくとともに犬のような息が荒くなり星のように湿った男の
指先が少女の硬い浴衣の襟元にひとつ、
またひとつと星型の模様を刻み込もうと、爪を立て始めている。
金平糖がささやくようにひとつぶ、またひとつぶずつ星たちが地上にあまねく降り注ぐ
暴力のように愛撫のように赤く甘く白く。
 
少女は体の芯に、あの、
不快な心地よさが、じくじく、と呼び覚まされてくるのを感じながら
蛇の筒の中ひっそりと目を開く、火薬にまみれた、かぐや姫のように
浴衣の硬い肌ざわ
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