うらない/岡村明子
 

誰かに言葉を与えるべく
机を出し
行灯を点し
師走の行きかう人々を
定点観測している

ねえあなた幸せですか

逆に訊いてみたくなる
うれない
うらない
のおじさん
恋人は
占ったとおりの人でしたか

やがて
長らく逡巡していた
一人の女が
うらない
の前に座る
本当は
三人の男と同時に付き合っていて
全部不倫で
たぶん
付き合っていると思っているのは自分だけ
でも
女は
一人の男の名しか言わなかった

そのときすでに
うらないは終わっていたのだ
女は
帰りにクリスマス用の
小さなショートケーキとシャンパンを買った

今日は
もう
店じまい
喫茶店の
窓越しに見ていた
私は
鳥と
ワインと
おもちゃの紙包みを
持って立ち上がる

さあ、あなた
帰りましょう
子供たちが
待っているから


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