輪郭線のために/ブルース瀬戸内
 
老人は考えています。

自分はルールの結晶なのだと

老人は考えています。


老人は考えています。

自分は自分のルールの結晶なのだと

老人は考えています。


何十年も生きると

余りにも多くのものに接して

いつしか自分でルールを作って

何かを守ろうとします。

その何かこそが自分であって

ルールこそが自分の輪郭線を描いて

自分が何者か教えてくれるのだと

老人は考えています。


ルールの中に閉じ込められるほど

自分の輪郭線がよりクリアになるのは

ひどく皮肉な気もすると

老人は考えています。

生まれた時はきっと
何の先入観もなく自由であったのに

その自由は、自分の輪郭線のために
不自由へと突き進んでいくのだろう、
人はそうせずにはいられないのだろうと

老人は考えています。



老人が考えている横で

その幼い孫が

ミニカーを食べようとしています。
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