切符/松本 涼
 
夢の中で僕らは
どこか田舎の景色の中を走る電車に乗っていて

君は何かを夢中になって話している
僕もそれを夢中になって聞いている


だけど気がつくと僕は
夢の中でうとうと眠ってしまって
目が覚めると隣に君は居なくなっていた


空いた隣の席には僕用の
帰りの切符がひっそりと置いてあって

僕はそれを手に取り
次の駅で降りることにした



けれど電車はどこまでも走り続け
どんな駅にも止まらないまま
景色は次第に僕の住む都会の街へと変わっていった


帰りの切符は必要なかったよって
あとで君に教えてあげよう  


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