伝えることは/
 
もたれかかりながら
ぼんやりと考えていた

やっぱりどこかで
間違っていた

伝えることをせず残せたものは
偽物の歌だけだった

老人になった女性が
彼の呟きを聞いて寂しそうに首をふった
そして優しい目をして言った
無口なあなたの短い言葉は
誰よりも正直で心がこもっていた と


そんなことはない
それはとんでもない誤解だ

老人になった少年は
そう言いかけてすぐに止め
そして微笑んだ


ありがとう
ポツリと それだけ言って
少年は目を閉じた

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