教室の中心で、愛を叫ぶ/神音
 
心地よかった。
「世界の中心…ってのが、嫌なのかもしれない」
「え?」
「世界の中心っていうのがね、私、嫌なのかもしれない」
「何で?」
「……抽象的過ぎるから?」
「また疑問系」
 そういうと、彼女は首をかしげながら、くすりと軽く笑った。
「……世界の中心っていうの素敵だけどね、もっと身近な場所が、私は好きだな。この小説も、本当に素敵だと思うんだけどね」
 そう言われて、僕は、席を立つ。
 不思議そうに僕を見る彼女のことはあまり気にかけず、僕は、教室内の端から真ん中へと移動した。



「……好きだよ」



 そんなに大きな声で言ったわけでもない僕の声は、風にのってどこまでも運ばれていく気がした。
 彼女は、驚いたようにこっちを見るけれど、すぐに微笑んでくれた。
 アキと朔のように、悲劇なんてない。世界の中心なんてロマンチックな場所でもない。
 でも、やっぱり僕らには此処がピッタリだ。
 教室の中心で、愛を叫ぶ。
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