淡水魚/光冨郁也
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そのまま、腰かけ、
息を吐く。
指先で筋肉のほてりを押さえる。
肩からしびれる指先までの、
輪郭が、青い光の点滅で浮き上がる。
拳を握る。
窓から雨が降り注ぎ、床にはう。
わたしの夜の、静かな、沈黙。
足元が濡れている。
女の形の水草が、頭を上げる。
足首をつかむのは、
あふれてくる、水草の手。
腰に、水草の脚があたる。
わたしの肩に、水草の腕がまわる。
わたしの首に、顔をうずめる。
唇の形を確かめたく、
わたしは、水草のあごに指をかける。
紅に塗られた輪郭に、爪がすべる。
水草の目を見つめる。
水草の透明な瞳を通して、
夜の風だけが、覗ける。
ひんやりとしたコロンの、
ビンの中に、
わたしはやがて、閉じ込められる。
指をからめられ、
水草と結ばれるように、
長いひれをなびかせて、
水面から顔をだし、
わたしは、息をするために、歯を見せる。
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