入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
何ともやっかいな詩人を採り上げてしまったものである。しかし、一度決めたからには、筆を先に進めなければならない。
入沢康夫は難解な詩人である。とても一筋縄ではいかない。僕のような素人が立ち向かうなど、あまりにも無謀な試みなのかもしれない。だが、入沢康夫の詩は難解であると同時に、得も言われぬ不思議な魅力を湛えていて、素通りすることなどは許されない強さを持っている。何といっても、この詩人は戦後日本の現代詩を代表する詩人であり、日本の詩について語る時にはどうしても外すことは出来ない。
入沢康夫の第一詩集は、一九五五年に出版された『倖せ それとも不倖せ』である。このタイトルだけを見るとべたべたに甘
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