いのち/折釘
 
濯いけずられ
めくらに排水溝を探りながら
流れ去るわたしのいのち
ざわめく血のいのち
風おこすくちびるのいのち
わたしが知らないわたしのいのち
かみしめて飲みこむ
わたしの下半身を冷えからすくう
座蒲団のそれも
蛍光灯を交流する電子のそれ
コンパクトディスクのまわるそれや
準星の爆発しつづけるそれ

中性子のかすかないのち
満月のしずかないのち
太陽のあきらかな
わたしの不安な
爆弾の蟲惑的な
競走馬のコーナーにかすむ息
教会の木枠にひとつだけ
孤独な
窓が
はめ込まれたすがた
それらすべて
あかるい象のむこう
おさない書き手のいのち
先生が黒板
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