午後三時の少年/相馬四弦
 
空にうかぶ声を追いかけていた

道はきれいな家やお店を抜けて

街路樹はどれも枝葉を停めて

バスの車窓に老婆の抜け殻を見た

石筆を握って走りながら

屋敷の塀に直線を引いてゆく

砂の流れる用水路を右へ左へ飛び越して

そして道はどんどんと細くなってゆき

やがて誰もいない ただの広場にたどり着く

息を引く父親のように脆く哀れな風が

そっとくるぶしを撫でて そのまま

少年は立ち尽くした

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