どこにでもある話 1/いとう
 
当時の純粋な彼にとって
彼女に男ができたなんてことは頭の片隅にも想像できなかったのだ

そしてそれは2週間後に起こる
その日の彼女は遅番のバイトで
いつもの時間になっても店から出る気配がなかった
彼は不安になりながらも2時間待ったと言う
店は閉まってもう終電もない
でも中に彼女がいるのは確か
不安になりながらも彼は待つしかなかった
「待つことしかできなかったんだよ」と
そのときだけ彼は少し笑った

店の裏口から出てきたのは彼女ともう一人
彼も知っている店の店員(もちろん男だ)
彼女はその店員と並んで歩き
彼女の家に向かわず
そのままホテルへ入っていく
彼はそこま
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