手紙/なつ
さざ波がなみだのように
打ち寄せては 返ってゆく
裸足の少女が想っていると
両の手のひらに
まるい硝子瓶が生まれた
涼風に
前髪を撫ぜられ
足首をくすぐられ
ようやく 頷いて
右手の瓶に
色とりどりの砂と
拾った骨と
ほんの少しの
唄を注ぎ込む
さみしいときに
どうかあせらないで
朽ちかけた貝殻で
そっと蓋をすると
白い頭の魚になって
宛先の島へと
波をあみながら
泳いで いった
夕焼けがいのりのように
きらめいては 消えゆく
左手に残された硝子は
砂時計みたいな顔をして
少女を急き立てはじめた
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