早春歌/芳賀梨花子
かわからないけれど、そんな息子を見て、怪我をしないかしらとか、ママがいなくて大丈夫かしらとか、夫の帰宅時間とか、そんなことばかり気になって、私、楽園だった夕方をばたばたと行き過ぎてしまうの。だから、かごめかごめの中の冒険は外側の敵役なのよ。
龍ちゃん、声を聞きたい。けれど、あなたはずっと雪の中。私、いつかあなたに渡さなくてはいけないの。あの時、私が買った赤い包みのチョコレート。あなたが眠る谷川岳のふもとの駅で買った赤い包みのチョコレート。こらからも大事にしていくつもり。だって、指切りしたから、ずっと、ずっと忘れないって約束したから。
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