小詩篇 「砂浜」/芳賀梨花子
 
「10月 」


少女だったころ
それは青空と同等で
わたしは生きる喜びを持っていた
埋もれていたものを
そのたび拾いあげても
掌から滑り落ちていく
昼間の悪魔は友人といい
夜中の悪魔は恋人という
そんなふうにみみうち
しないで
Deja`vu
あの日にかえりたいなら
この薄い皮膚を剥いで


「11月 」


神はどこに戻ったのかと問うてみる
歌は歌わない
そのかわりに
聞こえる貝殻の泣き声
静かに生きてきた海の音
白くなるまで繰り返し波に
そしてそれは
きっとはるかむこうの
わたしも住んでいた悲しい海
おかえり
君がわたしの恋人

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