Saudade./芳賀梨花子
してでもこの想いだけは
届けなくてはならない
「生まれてきたものは思ったより強靭だ」
見下ろすとそこには広大な海原が広がり
風はギター弾きのように歌を歌い
黒い布をまとった女たちと
乾いた街並みに暮らしていた
言葉がわからないわたしは
ただ歌を聴きながら
その街を歩く
街角では
鰯を焼き
滾る油をかけて
人々は食らう
匂い
生活
そこにあるもの
そして
生まれてきたものと
全うしていくものの
狭間に食らう人々がいる
「目が覚めても夢は続いていることを、
誰も知らない国がある」
それは、うず高くがんじょうそうな
石垣に取り囲まれた小さな
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