Saudade./芳賀梨花子
「あとにのこされたもの」
雲の隙間から
羽毛がこぼれおち
風にのる
海峡を渡り
山脈を越え
遥かかなたの砂漠まで
幌馬車が届けられない
あの砂漠まで
「月は地球の衛星である前に、
旅路支度が嫌いな星である」
真昼の月は真白く
なにも打ち消そうとはせず
それが追憶というものだ、と
わたしは追うもので
それに生きているうちは
わたしは少女でいられる
わたしはマリアさまのように
見たことも無いわたしの顔を
鏡の中にしまいこんだ
たとえ人の傷に塩を塗りこんでも
神さまは許してくださるのだろう
少女という存在はそういうものだ
だからこそ何を犠牲にして
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