八月の午後 スケルトン/半知半能
 
八月の午後 スケルトン
体に満ちてくる蜜をすくって舐めると
遠い日の蝉時雨 蝉時雨
ましてや雷【いかずち】の音 雷の音

意識の続かない二十三秒間
陰陽繰り返して雨を待ったことを
思い出しているよ 
確かに世界は狭かったが
意味を持たせるには充分に
直視できるものだった

いつか見つからない王国は
色彩を裏返しに見せて
心の中で石化する

夕焼けにソーダが映える
口をするりと抜けて嚥下すると
泡一粒々々が体を貫いて
影法師の身体を透けさせる
ゆっくりと
(透けていく)(透けていく)(透けていく)

始まりは曖昧に
お終いは宣告通りに突然と
芝居がかった演者も
幸福な疲れを覚える

初めから舞台には何も無かったかのように
見つからないものなど何一つ無かったように
今は斜陽がそこに踊っている

   
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