夜、ふれてゆく。/岡部淳太郎
 
集めてきた、のだ。
久しぶりに、
個人的に、

―ゆれている

微弱な震度。
(私だけが感じることが出来る)
だから、
隠れなくても、良い。
夜はどうせすべてのものを覆い隠し、
包みこむように眠らせるのだから、
慌てなくても、良い。
ふう、
   息を吐いて、
(肺)を落として、
まろやかに均される。
私はまたしても、

―ずれている

のだが、
まだ、良い。
時間はあるから、
火を拝むまでに、
何とか水を目に慣らしておく。
ふっ、
   ふっ、と、
        ふれてゆきながら、
星のさえぎられた屋根になる。
(どんな気分がする?)
私は夜の閉め切った扉。
明けるまでに、
ふう。
   今夜も、風は、

―とまっている



(二〇〇五年八月)
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