夜、ふれてゆく。/岡部淳太郎
 
ふっ、
   ふっ、と、
        ふれてゆく。
静かすぎる夜に、
綿毛の意志を運んでゆく。
日にさらされて、
火にあぶられて、
またもやさえぎられて、油っぽい焦りだ。
ふう。
   息のように、
煙草のけむりを吐いて、
ゆるやかにだるくなる。
あるいは覚醒、
眠れない夢精、
(どちらでもいい)
私はまたしても、

―ふるえている

その通りだ。
道を横切って、
真夜中の車輪に(轢かれて、)
ずれてゆく。
ふう。
   風のように、
吹流しの内臓を貫いて、
すみやかに通りぬける。
こんな夜をずっと過ごしてきたのだ。
こんな夜をずっと集め
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