面倒くさい夏休み/初代ドリンク嬢
 
げて」

のところで
救急車が走ってきた

近所の家の前に止まる

大人たちは少し気にしながらも
昔を取り戻すかのように
腕を大きく振り上げる

子どもたちは
面倒くさそうで
救急車に気付かないふりをして
だらだらと手を揺らす

救急車はいつも犬を連れて散歩をしている
おじいさんをのせて
走っていった

ラジオ体操をする高校では
夏休み前に
少年が
飛び降り自殺をしたという

だれも
何も
言わないけれど

カードにはんこをもらい
帰る途中
空には薄くなった丸い月が
まだ
見えていた

   「このかおる風にひらけよ
    それ、一、二、三」


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