こわくない/石川和広
鳥の死んだ目
亀の
平べったいの
動かない
体は来ない
のに心に来る
心が立ちすくむ
昔は
いきものが苦手だった
来るものの
怖さを
小さい僕は
よく知っていたのだろう
今日彼女の実家に
行った
犬がいた
まだ一才にもならない
雌犬だ
家族のものより
来訪者である僕たち
のほうに突進
してくる
彼女の母親は
冗談めかして
コラ!この子は
どこの子やっていう
ふところに入って
なめる
なめる
なめられている
ほとんど会ったことの
ない僕は毛だらけ
来る
来る
麻痺してるのか
犬の力なのか
怖くない
撫でてさ
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