スケッチブックの日曜日/haniwa
 
も見渡せそうな日だったから
3425番は旦那の目を盗み
1497番は会社を休み
3632番は研究を中断させ
僕は読みかけの本を閉じて
みんなで画材屋に行って、水彩絵の具を買った
あらゆる色が再び、僕らの手に戻った

その日の公園は記号が記号じゃなく
噴水の飛沫は光を受けてきらめいていたし
ベンチに並んで座る恋人達はこの上なく幸せそうだったし
雑草はクローバーだったし
木々は風を受けて歌っていたし
雲は遥か上空でおどっていたし
3425番はもはや3425番ではなく
1497番も3632番も番号ではなく、
そして僕も、僕らは友達だった

真っ白いスケッチブックに
思いっきり薄めた最初の青色を落とすと
スケッチブックはスケッチブックではなく
世界を見渡す窓になった

そして僕らはようやく思い出せたお互いの名前を
名残惜しそうに呼びながら
それぞれの場所に帰っていった

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