異常な時代に抗する言葉/岡部淳太郎
めばいい。それだけだ。
言葉で上手く言い表すことが出来ず、定義づけることも出来ないのだが、この異常な時代にこそ、時代に対抗するような言葉をつづるべきではないだろうか。それは政治からも宗教からも離れた(だから、それは昔のプロレタリア文学のようなものではありえない)現代という個人主義の時代にふさわしい「個」の言葉で、時代に対抗するのだ。誰かの物真似ではなく、ただ自分の言葉を書きつづること。そのことで時代の異常さに立ち向かいたい。それが詩としてどんな外見を持っているのか、それはわからない。だが、少なくとも、ただ綺麗なだけの抒情詩や折り目正しい定型詩ではないだろう。そんな言葉では、時代に対抗することなど出来はしないだろう。もっとぶざまで、ごつごつとしていて、手で掴めばその重量が伝わるような言葉、そんな言葉で詩を書きたい。格好悪くても構わない。定型にはまらず、美しさに逃げずに、自分の言葉をつくり出したい。この異常な時代に対抗するために、言葉という楔を打ちこみたい。それが、いまこの時代に詩を書く人間としての、僕の最大の望みだ。
(二〇〇五年八月)
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