コトバ紀/043BLUE
 
その昔、人間は言葉という
原始的な道具で意志を通わせていた

言葉によって人は傷つけあい
愛し合い、殺し合ってきた

やがて、言葉は時代と共に衰退し
意志を通わせる必要のない
今日の世界が出来上がった

ここでは、すべてが完成されている
ぼくたちはただその完成モデルを
なぞればいい

この世界に失敗はない


いつしかぼくたちは
言葉を忘れてしまった

それは結局とても
便利で楽なことだったんだ

ぼくは思う
言葉が人間を裏切ったの
ではなく
人間が言葉を裏切ったの
だと

いや

言葉が人間を見捨てたのかも
知れない
言葉を信じら
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