大福餅秘話/大覚アキラ
 
笑みは浮かべているが、目は笑っていない。
「じゃ、一つだけ、いただきます」
 かなり大ぶりの大福餅だ。必死で飲み込む。味なんてよく分からない。
「・・・ごちそうさまでした」
「まぁまぁ、もう一個食べぇな」
「いえいえ、もう、本当に結構ですから」
「ほぉ?ホンマにもう、食べられへんっちゅうワケやな?」
「いや、その・・・じゃ、あと一個だけ」

 結局、この調子で五個の大福餅を半強制的に食べさせられ、ようやくぼくは解放された。店に戻ると、口をモグモグさせてなにかを食べながら、Mがレンタルの伝票整理をしていた。
「おい、なに食べてるねん?」
 Mはニッコリと微笑んで間抜けな顔で答えた。
「・・・大福」
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