追想と花火/紫乃
 
しれない
     これはこの世界の様だと


     まるでいのちみたい


     もう少しだけ
     線香花火が
     綺麗でなければ良いのにと
     彼女は云っていた
     生きていたくなるね、と


     もう少しだけ
     生きていたいね、と


     (そして
      線香花火は
      ぽとりと)


     やがて
     祭囃子がやんで
     誰の花火も消えた
     僕らは
     忘れられてしまうのが
     怖かった
     ひとりで死んでいくのが
     怖かった


     彼女の死んだ日が終わる


     窓辺で揺れる風鈴が
     ちいさく、なく。
     
 
 
 
 
 
 
 

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