拝啓、乙武様。/みもる
して淀んだゲル状の深海をただよう
たった一人で
みんなが持っているものを失い
みんなが持っていない何かを得るだろう
拝啓、乙武様。
僕はあなたになりたい
そういうものにわたしはなりたい
でも一日、いや一瞬だけでいいんです
やっぱりあなたには敵わないだろうから
そして腐ってはいても
笑い合って叩き合える
たばこが楽に吸える
電車に駆け込める
点滅青信号を走れる
この手足は手足なんですよね
もう少しだけ頑張ってみます
もう少しだけ信じ続けてみます
この一瞬、ありがとうございました
僕も何かを得た気がします
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