キス/野島せりか
 
あなたとのキスにがっちりはまってしまって
どうして出会いのめぐり合わせは時々こんな風に私を脅かすのだろう

予感はしていたけれどね

あなたとのキスは必要とされるでも、必要とするのでもなく
どうしてもしたいというわけでもなく
我を忘れるわけでもなかった
別に後ろめたい事があったわけでもないのに

とてつもない疲労感に襲われた時のように
なぜかそこにばたりと倒れこみたくなる衝動をこらえた

自分で自分が分からなくなる
そういう部分に気付かせたあなたとのキス
知らない自分への導き
なにも翼をはためかせて空高く舞い上がるつもりなんてない

別にたいしたことじゃなかったよ
もう随分前の出来事みたい
そうやってあなたの中では
数人の女が過去になっていったのだろう
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