惑する夜/かぜきり
 
よぞらをひとさじ すくってくちへ


したにとどいたそのあじは

 実に甘美でほろ苦く

獏なるほうへと私を誘う


ゆだねてしまへと

 迫にささやく

こえの主はいずこであろう


  ここよりちかき奈落の底か

 ひがよりとおき桃なる原か


くらうものなぞないとゆだねて

逆毛振り立て葉をさざめかせ

笑みを作りて突と理る


からのえみとて こぼさぬものよ

ゆだね購うものならば

このままかかえて

葦を伝うさ


きづけばきえぬささやきよ

友と語らぬ世の糧よ

虚ろにまばたく星を擁いて

今宵もともにねむろうか







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